愛してるって言って

「あれ? 珍しいね。飛び付いてこないの?」



いつもは蒼ちゃんの名前が出てきたとたん、あたしは新幹線よりも速いスピードでその話題に飛び付いていた。


だけど蒼ちゃんに彼女がいるってわかった今は、胸がずきずきと痛むだけで、どうしてもそんな気分にはなれなかった。


俯いたまま何も言わないあたしを見てか、ずっと黙っていた圭ちゃんが、



「母さん、勉強の邪魔だから出ていってくれる?」



と言った。


普段なら“冷たいなぁ”と感じる言葉だけれど、今はあたしにとって物凄くありがたいもので。


それに圭ちゃんはあたしが蒼ちゃんのことを話したくないと思っていることに気付いて言ってくれたんだと思うと、心があたたかくなった。



「何よもう……冷たいわね」



ぶつぶつそう言いながら背中を向けた絢華ママは、出ていく直前に振り返って、



「あとでおやつを持ってくるわね」



と言ったけれど、ぶつぶつ言っていたわりにはとてもやさしい表情をしていて。


圭ちゃんの言葉をさほど気にしていないようだったからほっとした。