-恋side-
気がつけば夏休みまであと2日。
会えますようになって無駄に移動教室を遠回りしたり
食堂にも行くようにもしたし、
下校時間を色々変えて見たりもした。
それなのに一向に会えずにいて
メールすれば1発なのに、
でもなぜかそれに頼りたくない変な意地を
張っている自分もいて
「...今日も会えなかった」
残すこと1日...明日だけ。
「最悪明日メールしなさいよ!」
麗はあたしの肩をぽんっと叩いて
智哉くんと帰っていった。
..いいなぁ。
あたしもこんな風に....駿くんと...
2人の後姿を見送ってから
あたしは教室を後にした。
玄関はすでに人もいなくて
夕暮れで寂しくなった学校を背に歩き始めた。
とき_____
「恋!」
名前を呼ばれて咄嗟に振り向くとそこには
靴箱の横によしかかる...
「駿くん!」
「久しぶりだな」
駿くんがいて、相変わらず垂れ目で可愛い目を
細めてからあたしに近寄ると
ポケットに入れた手を出して手を上げた。
「今...帰りなの?」
久しぶりに会えてとっても嬉しいのに
いざ目の前にするとドキドキして
ちゃんと目を見れずになんとなく
ゆるく結ばれた駿くんのネクタイの結び目に目を向けた。
「待ってたんだ、恋のこと」
「えっ...?」
「帰ろう」
「...うん」
ゆっくりと歩き出した駿くんの背中を呆然と見つめていると
駿くんが「どうした?」と
前髪の隙間から見える眉を下げてあたしを見た。
「あっなんでもない!」
するとフッとまた優しく笑って歩き出したから
あたしは駿くんの隣に駆け寄って歩き出した。