とりとめのないことを考えていたら、いつの間にか家に着いて。

家には誰もいなくて、さくらは一人夕食を作り、味もわからないまま食べ終え、服さえ着替えずぼすんとベッドに飛び乗った。


ベッドの微かな振動音が消えると、再び静寂が辺りを包み込む。

さくら、独りだけ。


7年前離婚して、それからずっとさくらを育ててくれている母は、今日も仕事できっと深夜まで帰って来ないだろう。


さくらは、父親の顔を思い出せない。


もしかして、桜色の夢の、桜の向こうの懐かしいひとは、父親なのだろうか?

……直感が、違うと告げる。


だけど──。

わからない。

もどかしい。


母が帰ってくるまで待とう、そう思っていたのに、さくらはいつの間にか眠りに引き込まれていた……。