ずっとそうしていて、鳴咽が収まってきたら、シグマは優しくギュッと握る手に力を込めた。


「ねぇくららちゃん。キョンキョンなりの優しさじゃないかな」

「優しさ?」


意味が分からず、すぐ横にあるシグマの顔を見た。


「くららちゃんが失恋した事に傷付かなくていいように、そんな風に言ったんじゃないかな」


危ないところを助けて貰った、そのドキドキを恋と勘違いした

一日やそこらで本当の恋なんかするもんか

京極の声が頭の中をこだました。

そして何より「お前が怖い思いしたのは誰のせいだと思ってる」と言った時の苦しそうな声。

本気で心配してくれていたのが分かる。


「キョンキョンはいい人だよ」


散々自分でも受け入れようとしていた言葉を、シグマに改めて言われ、やっぱりそうなんだな、と思う。


「変態だけどね」

「だね」


私の返事にシグマも賛同し、二人で顔を見合わせて笑った。

後でちゃんと京極に謝ろう。