まつ毛で影ができそうな彼の目許には、うっすら悲しみが浮かんでいるように見えた。


「僕の父で、とある会社の会長をやっている男だ。大の男が一瞬で消えた」


「え? お父さん?! いつ?!」


もはや黙って聞くつもりでいたことなどすっかり忘れ、私は京極を睨むみたいに鋭く見た。

こんな悪い冗談、許さない。半分、そんな気持ちを込めて。

しかし京極は嘘だとは告げず、伏し目がちに続ける。


「十日前だ。だからあのチラシやCMを作ったりして、光が出せる者を探した」


人が消える……

私が答案用紙を消したみたいに、彼の父親を消した人がいる。

その事実はとても重く、言い知れぬ不安がのしかかる。