大好きな明希くん!

次の日の朝は重苦しい空気に包まれてて。





「…おはよう。」








「おはよう。なに?みんな暗くない?」








璃子さんは何も事情を知らないようで、明るく振舞っている。








「何もないですよ。大丈夫です。」








「わりぃ。俺帰るわ。」








「え、麻也どうした?」








「このまんまでもらちあかねぇし。とりあえず頭冷やす。」








麻也は、私のことを怒らないように必死に感情を抑えてる。




全部全部、ずるいのは私だ。








「明希くん、私ね。あの…」








好き、その二文字が出てこない。
明希くんと璃子さんは頭の上にはてなマークを浮かべている。







「あの、あのね。」









「明希!コイツは、あれからずっと明希のこと好きなんだよ。なんで気づかねぇんだよ。」








「麻也…?」








「なんでずっと一緒にいんのに…、気づいてやれないんだよ…。」








麻也…。








「あの、えっと。つまりその、柚子は俺の事好きってこと?」








「…うん。その迷惑なのは分かってるんだけど…。」









私は思わず目をそらした。
璃子さんが涙目でこっちを見てたから。








「あの…、ごめんなさい。私、ただ伝えたくて…」








「…なんでずっと黙ってたの?」








璃子さんの目は、悲しさというより怒り。
黙っていた私に怒っているんだ。








「あの、ごめんなさい。」








「璃子さん。コイツは、言わなかったんじゃない。言えなかったんです。明希が困るくらいなら自分の気持ちなんて後回しでいいって。」









「柚子…」








「だけど、こうして勇気を出していったんだ。その答えを決めるのは璃子さんじゃない。明希だ。」








強い光を宿した麻也の目は、はっきりと明希くんを見ていた。








「俺らは帰ります。後はゆっくり考えてください。だけど、万が一柚子を傷つけるようなことがあれば、俺は一生許さない。」









麻也…。


私は麻也に手を引かれ、外に出た。
そこで麻也は私の方に向き直った。








「ごめんな、こんな強引なことして。だけど、柚子は精一杯頑張ったな。」









そう言って私の頭を撫でた。








「麻也ありがとう。私麻也がいなかったら、きっと今も言えてなかった。璃子さんには申し訳ないけど、言えてよかった。」








そして、わたし達はバス停に向かって歩き出した。