「(あの男の子…、同じ制服だったよね…)」


お礼も言えなかったまりんは、学校でその男の子を探すことにした。

けど、そんな手間も省けて簡単に見つけた。



(きゃ〜〜!!!!翔くんかっこいい!!)



入学式前だと言うのに、教室の廊下は女子たちで溢れかえってた。

「(なんだろう…翔くん?誰?)」

何事か分からないまりんの視界に入ったのは、さっき助けてくれた男の子だった。


でもとてもお礼を言える状態ではないし、まりんのイメージとは全く違う。



『君、可愛いね』

(し、翔くん?!♡)



女の子にそんな甘いセリフをはいて、腰に手を回す。


「(……さっきの、人、だよね…)」


信じられないまりんは取り敢えず教室に入って自分の席に座った。

友達もまだ出来てないから不安で仕方ない様子…。



そしてまりんの視界が急に暗くなって、顔を上げるまりん。




『さっきは大丈夫だった?』




さっきまで女の子に囲まれてわいわいしてた男の子…翔がまりんの顎に手を添えてそう言った。


「…ぁ…ぇ…」


急すぎて焦るまりんは、ひたすら目をぱちぱちさせてた。


「…ぁ…ありがとうござ…(ねぇー翔くんこんなやつほっとこ?)」


さっき可愛いと言われてた女の子が翔の腕に巻き付くようにくっついていて、まりんを睨んだ。


まりんがお礼を言う間もなく、女の子たちに翔を連れて行かれてしまって…。



「(……言えなかった……)」