ドンッ…

「すっ、すみま…(いったー、骨折したんですけど)」


西桜高校、一年南まりん。

かなり運のない女の子で、入学式当日から周りの目が気になって仕方がないみたい。

なんとか上手くやろうと、そう意気込んで来たはずが…。


(なぁ、金、あんだろ。その制服西桜だろ)


学校に向かう途中に運悪くガラの悪い輩とぶつかってしまって。


「…す…すみせん…っ、」


怖くて震えながらも頭を下げるまりん。

勿論許してもらえる訳もなくて、がっつりとリュックを掴まれて体を揺さぶられる。


「…やっ…めて…」


ついに転んでしまうと

(だっさ、ほら、早く金、出そうな?)


輩がまりんと目線を合わせて、まりんの頬をぺちぺちと叩く。

怖くて泣きそうになるまりん。

もう高校生だって頭で何度も言い聞かせ、泣くのを我慢するけど涙は溜まっていた。


(…あーあ、言うこと聞けねーの)


等々怒った輩は大きく手を振りかざす。


まりんは思い切り目を瞑った。


「……っ!!」


でもいつになっても殴られない。



そっと目を開ける。



『本気で骨折したいわけ?』




輩の腕を軽々しく掴んでいる男の子。

よく見ればまりんと同じ制服、同じネクタイの色…。


(何だこの餓鬼…!離せ!!)

『餓鬼みたいなことしてんのはどっちだよ』



男の子の圧に負けたのか、

(うるせぇ…!!)

負け犬のようにそれだけ言うと、その場から走って逃げていった。


まりんの溜まっていた涙は既に頬を伝ってて、振り返った男の子はまりんの濡れた頬を優しく拭った。



『…泣き止んで』



男の子は鞄を持って先に行ってしまった。