言った途端にすごい目付きで睨まれる。けれど、ランドセルを背負っていた頃から付き合いのある彩音のそれは怒っているのではなく、核心をつかれて言い返せないだけだと分かっている。

「彩音の言う知らない女の人、きっとお店のお客さんなんじゃないかな?それか、取材の人?良くテレビなんかも出てるから、村川さん」

 村川亮……見た目は確かにイケメンで長身で、パティシエとしても一流で、世の女性を虜にして止まない。だけれど、職業病と言っていいほどスイーツの事しか考えていなくて、自分にも他人にも厳しいストイックな性格故に彼女にフラれるという残念なイケメンなのだ。

 そんな村川さんと出会ったのは、実は私たちが小学生の時で、彼が専門学生の時。その頃から彩音は村川さんにぞっこんで、将来パティシエになって二人でお店を開きたいという夢は今も変わらない。

「そうかな?そうだよね?絶対そうだよ!亮ちゃんは私の彼氏だもん……ついでに婚約者だし?」

 彩音のポジティブ(タフ?)さも変わっていない。多分、村川さんもこういう所は気に入っているんじゃないか、と私は思っている。

 ……出会ってから今までの六年間、約二千回の告白全てを断っていても。