「もう、聞いてよ!あのね、あのね、亮ちゃんったらひどいんだよ?私に隠れて、浮気してたの‼もう最悪なんだけど……う、うぅっ」

 怒って泣いて、その感情の起伏に私は毎度呆気に取られる。そして、いつものように……

「うん、うん……話聞くから、とりあえず場所変えよう」

 出入り口の前、人の多い場所で彩音が泣きながら私に抱きつく姿は悪目立ちし過ぎている。

 なんとか宥めて、近くのコーヒーチェーン店の中に入って注文をとり、席についた。

 それから、ホイップクリームが山ほど盛られた激甘であろうキャラメル味のフローズンドリンクを無言で飲み続ける彼女を、ただ見つめて話し出すのを待つ。

「……昨日、新しく考えたレシピを亮ちゃんに見てもらおうと思って会いに行ったら……そしたら……私の知らない女と仲良さそうに話してて!!もう、信じらんない……許さないんだから……っ!」

 彩音の言う亮ちゃんとは、彼女が通う学校の特別講師で、現役の有名パティシエで、彩音の彼氏で、パティシエになる夢のきっかけをつくった人。だと言っているが、一つだけ間違いがあるので訂正しなければならない。

 そう、それは……

「村川さんは彩音の彼氏ではないよね」