そおっと、こっそり、顔を上げて……瞬間、立花君と目が合って、もう自分がどんな顔をしているのか分からなくて変な顔なんてしてたらどうしようとか、何か言った方がいいのかなとか、混乱してしまう。

「柊さん、なんか雰囲気変わった?それに、すごい顔が赤い」

 ああ、神さま、こんな機会を与えてくれて嬉しいけれど、急すぎて心の準備ができていません。

「ちょっと待ってて」

 堪えきれず隣のユイちゃんに寄りかかっていると、食堂で買ったであろう天ぷら蕎麦を置いたままどこかに行ってしまった。

 その後ろ姿を見送って、ひとつため息を溢す。そんな私にユイちゃんからも同じものが吐き出された。

「だから言ったのに……せっかく可愛くしたんだから、どんなチャンスも逃さないようにそれを隠してちゃもったいない」

「ま、まさかこんなに突然来るだなんて、誰も思わないから」

「こりゃ作戦練らないと。今週の日曜ヒマ?うちにおいでよ」

「俺もヒマだけど?」

 立花君はいきなり現れるのが趣味なのだろうか。そうだとしたら、私の心臓はいくつあったって全然足らないだろう。

 治まっていた動悸が再び私を落ち着かせてくれない。そんな私なんてつゆしれず、手に持っていた紙パックのジュースを私とユイちゃんの前にそれぞれ置いた。