クラスの人と話すことはほとんどないに近く、話したとしても次の授業が何だったのかとか、宿題があったか、またはそれを写したいから貸してくれとか。

 休み時間には授業で使われた黒板を綺麗にし、体育などの移動授業の時は教室の戸締りを、誰に頼まれた訳ではないが習慣のようにしている。

 彩音はそんな私の学校生活を本人よりも不服そうな顔をして聞いては、つまんないと口を尖らせていた。

 私はそれを否定しなかったし、でも肯定もしなかった。

 一番の友人にも秘密にしていることが一つだけある。


 ……人生初めての“ 恋 ”をしているのだ。


 私の一方的な片想い。きっとドラマのような恋愛は出来ない。

 それでも、退屈な日常のささやかな幸せ。このまま誰に知られることもなく、私の中だけの気持ち。

 なんて、正直に言うと、もちろん期待している気持ちがないとは言いきれない。こんな私でも、彼の側に居られたらとか、私の事を好きになってもらいたいとか、これが恋なのかと驚いてもいる。

 学校で見かける度に落ち着かない気分になるし、彼が女の子達と話しているのを見ると悲しくなる。

 でも、私には届かない距離にいる彼……立花 洸(タチバナ ヒカル)は学校でも有名なモテ男で、そんな人に地味で存在感のない私が片想いしてることは誰にも言えない。