非常階段を下りきって、さおりの姿を探す。

 さおりはテニスコートの傍らにある植え込みに、しゃがみこんでいた。

「何してんの!?」

「あっ、結奈……。別に、何もしてないし。どっか行けば?」

 そう言う彼女の手はかすり傷だらけで、自慢の爪は欠けたり、土なんかで汚れていた。

「璃子のイヤリング、探してるんでしょ。私も探すから、どこら辺か分かる?」

 戸惑うさおりは、それでも「分かんないけど、多分ここら辺」と言った。

 私もシャツを捲り上げて、植え込みの中に手を突っ込んだ。

「ほんと、さおりは強情っ張りなんだから」

「それを言うなら、結奈だっていちいち言い方がきついのよ!私、ちょっと泣いちゃったじゃない」

「ちょっと?だいぶの間違いじゃない?目がパンダになってるけど」

「えっ、嘘、やだ!」

 慌てて目を擦るから、手についていた土が顔に付いた。それを盛大に笑ってあげたら、さおりはその手で私の頬っぺたをつねるから、私まで汚れてしまった。