周りから悲鳴のような歓声が沸き上がる。ひー君は唇を離すと悪戯っぽく笑って、目を見開いて固まる私の頬にまた口づけた。

「ち、ちょっと……!」

「へへ、もう我満できなくて!これからはいっぱいキスしよう」

 ひー君のその言葉に、彼の友達が囃し立てるように口笛を吹いたり、もっともっと、と盛り上がっている。

 いつの間にかそこには人だかりが出来ていて、どこから持ってきたのかクラッカーまで舞い上がり、大変な事態になってしまっていた。

 私とひー君は顔を見合わせて困ったように、だけど、心から笑った。

 しかし、そこへ……

「こらぁ!!そこで何してる、授業始まるぞ!」

 生活指導の教師が怒鳴りながらやって来て、集まっていた生徒は蜘蛛の子を散らすように逃げ出していた。

「ほら、俺たちも逃げよっ!」

 大好きな彼が、私の手を引いて、楽しそうに笑ってくれる。

「うんっ!」


 叶わないと諦めたり、些細なことに期待したり。

 迷うこともあって、自分の弱さに嫌になったりもした。

 その度に支えてくれる友達がいて、まっすぐな気持ちを向けてくれる彼がいて。

 ポーカーフェイスの私はどこにもいなくなっていた。

「ひー君、大好きだよ!」

 大好きな、私だけの王子さまが、私をみつけてくれたから。




               ~+ fin +~