「なんか、想像してたより何倍も強烈な子なんだけど」

 ユイちゃんなんて、食べかけの揚げ餅のことなんか意識にないという感じで口を開けて呆気にとられていた。

「あ、私、彩音!璃子の幼馴染みで、将来は素敵な旦那さまと一緒にスイーツの店を開いて、幸せな……」

「彩音、村川さんはどこなの?」

 解放されて自由の身になったは良いが、彩音の妄想ワールドに歯止めがきかなくなる前に現実に戻させた。

 それにしても、珍しい。村川さんが居るとそこから離れたがらない彼女が一人だなんて。

「あぁ……それがね……」

 可愛い顔が台無しになるくらいどんよりした表情で肩を落とす彩音に、私とユイちゃんは顔を合わせて一緒に首を傾げる。すると……

「おい!俺を連れ出しといて勝手に先々行くなよ!!」

 村川さん……ではない、彩音と同じ学校の制服を着て、栗色の髪に外国人のような整った顔をした男の子が流暢な日本語で怒りながら近づいてきていた。

「誰におい、なんて偉そうに言ってんのよ?私だって別にあんたなんかと来たい訳じゃなかったんだから」