翌日、言われた通り昼休みに渡り廊下に行くと、速川さんはまだ来ていないようだった。

 私は柱に寄りかかって顔を手で扇ぐ。今日は雲が一つもない晴天で、立っているだけで汗が滲む。

 早く来ないかなと通り過ぎて行く人を見送っていた、その時。

「ねー、洸!」

 耳に届いた名前。無意識に反応して振り向けば、派手な化粧に最大限にスカートを短くした女子と連れ立って歩く、彼の姿。

 クラスの違う私が彼を見られることは多くないから、会えて嬉しい……はずなのに、私の心は重く沈んでいく。

 すれ違う時、私はたまらずに俯いて、二人の足が遠ざかるのをじっと待った。

 女の子の高い声、立花君の楽しそうな声。

 再び顔を上げて、その背中を見送る。彼の隣にいる女の子は本当に幸せそうな笑顔を浮かべていて、紅く染まった頬は恋をしている表情だった。

「いいな……羨ましい……」

 思わず漏れでた言葉にため息する。羨ましがる事さえ、私なんかがおこがましいのに。と考えていると……

「2年1組、田原 さおり。彼女は立花に好意を持ってるけど、あいつは全く興味なし。当然ながら二人は付き合っていない」