自転車を全力で走らせて学校に着いたのは、予鈴が鳴る5分前。急いで駐輪場に自転車を止めて、昇降口まで早足に向かっていると「璃子ちゃん」と呼ぶ声がして、振り向く。

「おはよ!璃子ちゃんがこの時間に来るの珍しいね?」

 今日も絶好調にキラキラ笑顔の洸君。実はあの告白が未遂に終わった日から夏休みの間は会えてなくて、連絡先を交換したり名前で呼びあったりした事が本当は幻だったんじゃないかと思い始めていた。

 けど、やっぱり現実なんだな……と頬をつねった痛さで実感する。

「それ癖なの?すっげー痛そうだけど」

 可笑しそうに笑うのを見てドキドキする鼓動も、洸君が私を見てくれている喜びを伝えてくれる。

「うん、大丈夫、おはよう」

 たまには遅く来てみるのもいいな、なんてのんきな事を思っていた私を、洸君がまじまじと見つめているのに気づいて、落ち着きなく首を傾げる。

「どうしたの、何か付いてる?」

「眼鏡」

「へ?」

「変えたんだ、眼鏡」