「璃子ー?まだ居るの?早く学校行かないと遅れちゃうわよ」

 リビングから聞こえたお母さんの声。散らかった洗面台の片付けをしながら返事をする。

「う、うん……ねぇ、お母さんっ」

 急ぎ足でリビングへ向かって中に入る。すると、お母さんとお父さんが私を見て大きく目を見開いた。

「んまぁ!コンタクトは怖いから駄目だって言ってたけど、やっと眼鏡卒業したのね!!」

「そ、そうなんだけど、なんか変だと思うの。やっぱり眼鏡の方が良いんじゃないかなって」

「そんなことない、似合ってるよ。だけど、もし気にするなら度の入ってない眼鏡をかければ良い。お母さんが一つ持っていただろう?」

 お父さんの言葉にお母さんが膝の上に乗せていたリッキー君を下ろして、小物類が入っている引き出しを探し出す。下ろされたリッキー君は私の足元に駆け寄って、撫でて言わんばかりに尻尾を振って体を擦り付ける。

「あ、あった、あったわ。でも、私はかけない方が可愛いと思うのだけど?」

 私に引っ付くリッキー君を抱き上げて眼鏡を渡すお母さん。リッキー君も同調するようにワンと一鳴きした。

「うーん……」

「璃子、時間大丈夫かい?そろそろ行かないと」

 悩む私にお父さんが言って時計を見れば本当に遅刻しそうな時間で、私はとにかく眼鏡をかけて慌ただしく家を飛び出た。