はいすくーる!

メロンパンを食べ終わり、少しだけ満腹感に浸っていると、「キャハハ」と笑い声が聞こえて身体がビクッと跳ねる。
ここ最近天気がいいせいか、お昼ご飯を食べ終わった生徒が中庭で遊ぶようになり、私はそんな人たちから逃げるようにそそくさと中庭を出る。行き先は勿論、図書室だ。

ここの図書室はいい。静かだし、何より品揃えがいい。ライトノベルから一般のもの、スポーツ雑誌や新聞まで置いてある。素晴らしいの一言に尽きます。うん。

基本、長いお昼休みはここで過ごす。わからないけれど 、ここの学校の人はあまり図書室にこないようで、言ってしまえばここにいる人は司書の方と私だけ。他に人がいるのを見たことがない。

司書の方は女の人で、目付きは悪いけどいい人だ。……お話したことないけれど。
いつも本を借りるとき栞をくれる。それだけで単純な私はいい人と思ってしまう。
残念ぼっちは単純です。

(あ……これ、面白そう……)

ぽてぽてと本棚を歩きながら見ていると、一冊の本が目に入った。タイトルは『夜市』。作者はわからないけれどいくらか前の本のようだ。

(今度借りよう……)

今は満から借りているライトノベルを読まなければ、と自制する。

満とは、週に一度会う。私から会いに行くのだけれど、この前中学校に行ったら、

「立場を考えて、来て下さい」

と中学校の先生に言われてしまった。その意味はつまり。

「中学校に来すぎだから、あまり来るな」

…………出入り禁止を食らったのだ。

(確かに、確かにだよ?満に会いたいから中学校に行くけど、そんなに駄目なの……?)

満だけじゃない。他の大切な後輩にも会いに行っているのだ。他に会える日がないのだからいいじゃないか。

(多目に見てくれ、ないんだよねぇ………)

はあ、とため息が出てしまう。ただ会いたいだけなのだ。ホントのところ行っても満しか見ていないが。

………いや、それともう1人。私は見ていた。

満の目線の先にいる女の子───綾香だ。

満は、綾香が好き。

多分、綾香も満が好き。

二人は、両想い。

付き合っていないのは知ってる。毎日満から来るメールで相談を持ちかけられているから。

私と満は友達だ。今までも、これからも。
ずっとそうなんだ。私だけ、こんな想いを
持っている。満にとっては迷惑でしかない
『好き』の感情。

メールで相談されるのだから、私はまず恋愛方面で意識されていない。私の恋は既に終わったと言っていい。

でも、諦めきれないのは満が私に優しいからだ。そして、その優しさに甘えているからだ。

(…………ごめんね、満)

謝っても何をしても許されることなんてないとわかってる。でも、好きになるくらいいいじゃないか。

告白はしない。迷惑になるから。

ただ、好きでいる。

これは、一方的な恋の物語。
残念ぼっちな泣き虫の片想いの話。