桜が舞い散り、青々とした葉が茂るこの季節。1ヶ月前、私は新たなステージに踏み出そうとしていた。

─────そう、していたのだ。

(うぅ……、友達できないよぅ………)

私、川崎由亜は高校に入学して早1ヶ月が経った今でも友達ゼロ。極度のアガリ症のおかげで緊張しっぱなしの私は自己紹介でもテンパり、クラスメイトに笑われた。入学当初から既にグループができているし、グループに入りたくても、自分から話しかけることもできずにいる。その結果が今だ。

(お昼休みは中庭の隅っこで1人、教室では自分の席でラノベ読んで、部活の漫研も1人で絵ばっかり描いてるし……。
うぇぇん……)

残念ぼっちな私は今日も1人、中庭でお昼ご飯のメロンパンを食べていた。

(治したいのになぁ……どうしたら治る……??)

いつになってもアガリ症が治る気配はない。自分から変わろうとしなければいけないとわかっているのに、ズルズルと現在まで引っ張ってしまっている。

(もうやだよ…、なんで私ってこうなの……?)

じわりと涙が出てくる。残念ぼっちは泣き虫だ。

会いたい、とふと思った。

1個下の大好きな人。口が悪くて、会うたびに「馬鹿」とか「嫌い」とか言ってくるけどホントは優しい人。
私が中学を卒業した時なんて泣いてくれた。男の子なのにね。

(声、聞きたい………な……)

変声期がまだ来てないのか、少し高めのその声が、今一番聞きたくて。
メロンパンにかじりつき、その名を呟いた。

「満………」