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「お昼はあっという間だなー。」

「俺はいつでも休み時間だけどな。」

「授業にはしっかり出ましょう!」


お前は先生か。
そう思ったけど口にはしなかった。

夏希は面倒見のいいやつだ。


「次は英語だぞー!」

「めんどくさい。」

「理解できたら楽しいのに。」

「ローマ字書けねーし。」

「おっと予想の斜め上だったわ」


俺が英語を学ぶとしたら
まずはローマ字を覚えることから。

そんなの面倒だ。やってられない。
読むことは出来るけどな。

夏希は英語を人一倍勉強している。

何か理由があるのだろうか。
そんな話したことないからわからないけど。
単純に、得意な科目なんだろう。

三階までの階段を上りきったところで、
ちょうど授業開始5分前。


「じゃ、なつは頑張って。」

「はいよ。翔も数学の続きやっとけよー?」


適当に返事を交わして、教室前で別れる。
俺は例の特等席に向かうつもりだ。

誰かに見つからないよう、
忍び足で生徒会室の前を通った。

はずだったが。


「お、翔ちゃん!」

「裕太…。」


教室から出てきた裕太に出くわす。


「またさぼるんですかー?」

「今更ついていけねーし。」

「そうだなぁ。じゃあちょっと待ってて。」

「?」


そそくさと一階へ降りていく裕太。

もうすぐ授業だってのに、大丈夫なのかよ。
待てと言われたから待つけど。



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