走り去っていく美咲ちゃんをしばらく見つめていると、

「今泉さん、大丈夫?」

そう声をかけられハッとする。

そうだ、今は課長と一緒だったんだ。

「あっ、大丈夫です。」

思わずボーッとしてしまった。

「あの、ありがとうございました。私、ああいう時に上手に誤魔化せなくて…。すみません。」

そう謝ると、

「俺は何も誤魔化してないけど?」

「えっ?」

「まだ付き合ってないのは本当でしょ?」

「へっ?」

間抜けな返事をして驚いていると、

「じゃ、飲み直しに行こうか。」

と言って課長は向きを変えて歩き出した。

………あの、課長、今サラッと何だか意味深な事を言いませんでした⁈

しかし、何事も無かったかのように歩いて行く後ろ姿に、これはデートなんですか?とは聞けなかった。

いやいや、変な期待はしちゃダメだって。

自分にそう言い聞かせ、課長の後を追った。