「いいことを教えてあげる。」
落ち着き払った声で、彼女はそう言った。
語尾に音符マークが付いていそうな軽快な声。
「あなた達にわたしを殺すことは出来ない。逃げた方が得策よ。」
「…はあ?」
「ま、どうせ無意味だけどね。」
「何言ってんのか分かんねえよ、クソ女。」
奴らの見下した目も凄みがあるけど、それ以上に"彼女"の雰囲気は只者じゃないように感じた。
「アンタ達にクソ呼ばわりされる筋合いはないわね。ま、わたしを相手にしたんだから…、それなりに覚悟してるんでしょう?」
彼女は、そう言ってニコッと笑うと、次の瞬間には、1番近くにいた連中のうちの1人の女の顔を片手で掴んで、床に叩きつけた。
間髪入れずにみぞおちと首筋に強烈なパンチを食らわして、足で肺を潰す蹴り。
思考が停止する。
僕はずっと、全てを眺めてることしかできなくて。
何だか、目の前のことがブラウン管の向こうの出来事のようだった。
幻みたい…。
「お前っ……!」
相手の男が彼女を睨む。
あいつの顔が歪んでるの、初めて見た…。
クソ!
そう悪態をつきながら、男がパチンと指を鳴らして何かを合図した。
ーーシュン!
そんな音が四方八方から聞こえて…。
気づいた時には、彼女目掛けて周りを囲むように数本の小型ナイフが、奴らによって投げられた。


