【ナツキ】
…シリウス。
目の前で光る一点に視界が支配される。
それは、…心までの支配。
……拡がる闇。
なんでだろう、涙が出そうだ。
弱いね、弱いよ。
何年経っても、強くなんてなれない気がする。
そう願うのに、現実って、上手くいかない。
こんな冷たい夜を幾度も過ごして、記憶のなかで笑う自分がいる。その度に泣きたくなるよ。
何も変わらない、あの頃が懐かしくて…。
…………悲しくて。
夜道を歩く自分の足音だけが、静かな空間に響き渡った。
目の前は真っ暗だから、いつも上を見上げてしまう。
いや、違うか。
もう癖なんだね。これが。
でもその度に、心が壊れてしまいそうになる。
ぎゅっと握った心の臓は、命の証なのに。
何も望まなくて、でも全てを望んでいた。
今も昔も変わらずに。
頭上から降る月明かりに、自分の影を落とす。
藍色の空に星が降っても、もう願い事なんてしなくなったけど。
夜空に溶け込んだキミの声を見つけたくて。
煌めく星にキミの虚像を重ね合わせて。
たくさんの文句を、少しのありがとうを、数え切れないごめんねを。
声にならない声で、伝えたとしたら。
すべてが変わった今に溶け込めんのかな。
あの頃の写真も映像も、もう何もないけどさ。
でも、この歪んだ気持ちを、キミにだけなら、綺麗に残しておける気がするから。


