リュウが息を吐いた。
あたしの持つグラスから氷のカランっていい音がして、この場には不釣り合いに感じた。
「那月の傷見たとき、正直びっくりした。俺ら、そういうのは耐性ついてる方なのに。」
あたしだって、びっくりしないわけじゃなかった。
でも、あの場で驚くことはタブーだ。
あたし達が受け入れていくべきなのに、真っ先に拒絶したらどうなるかは想像つく。
本人にとっても、気分は良くないよね。
ぼーっと隣のリュウを見つめながら、話を聞いた。あたしが口下手だから、うまくまとめてくれる。
「…那月が過去にどんな目にあったかなんて想像しかできないけどさ…。でもあの傷が、那月が受けてきたものを物語ってる。」
明の射るような真剣な目に視線を反らせない。
リュウは落ち着いた声で、明にゆっくり話した。
「傷も、痣も、消えるはずなんだ。ホントは。そりゃ多少残ったりはするけど。
人間の治癒力で治るはずのものなのに、あんだけ残ってるって相当だと思う。」
確かに…………。
擦り傷も切り傷も、普通は治るもんね。
それがあんなに傷として残ってる…。
どうしてだろう…。人間って残酷だ。
「俺は断片的なものしか見てねえよ。那月が受けてきたものは俺には分からない。けど、あの傷以上のものを那月は背負ってる。」
リュウが、ぽつりぽつりとゆっくり話し出した。レモンティーがもうなくなりそうだから、注いであげよう。


