最後の1人は龍平くんに抱きかかえられながら、僕のことをじっと見つめていた。
「ヒーナ。ほら。お前も挨拶。」
龍平くんの言葉も右から左の女の子。自分の全体重を彼に預けている。完全に無防備だ。
「この1番チビが高杉陽菜(たかすぎ ひな)。今3歳でこの家の最年少。」
里香ちゃんの説明を受けて、な つ きだよ、と分かりやすいつもりで挨拶をした。
何秒か固まったまま、瞬きだけしてから。
うんうんと2回頷いたその小さな女の子は、
「ひなだお。」
そう言ってから小さく笑って、眠そうに目をトロンとさせた。
「龍に抱っこされてるから眠くなっちゃったね〜。」
里香ちゃんが陽菜ちゃんの顔を覗き込む。龍平くんが静かに体を揺らす。
スヤスヤと気持ちよさそうに眠る陽菜ちゃん。
龍平くんと里香ちゃん、3人で顔を見合わせて笑った。
こんなに穏やかな晩餐は、いつぶりだろう。
終始笑っていられて、僕は楽しいと思えた。
これまでの生活を振り切って、これからは新しく始めるんだ。
今までの自分は捨ててしまおう。
無くせない過去なら捨てればいいんだ。
それで、もっと日々を楽しみたいし。
振り返った時に素敵な思い出で塗りつぶせる自分でいたい。
この時、そう思ったんだよ。
ただ幸福な未来を信じてた。
疑いもしなかった。
だって、この家の家族の一員として僕は今日から暮らすんだから。


