【那月】
「そうだね。」
「え?」
思っていた以上にさらっと答えた明に、今度は僕が固まった。
「みんなワケありだよ。かく言う私も。」
「そうなの?」
「うん。私、血縁者いないし。」
"血縁者"という言葉がやけに耳に残る。
どいうこと…?
「血筋的には天涯孤独ってやつだよ。」
「…親戚も?」
「うん。そもそも両親が親戚付き合いが皆無な人だったんだよ。
そんで、13年前だから…那月はまだ生まれてないのか。私が5歳の時に両親死んじゃって。
そっから生きるために…、うーん、例えると、裏社会に片足突っ込んでますって感じのハチャメチャな人生。酷いでしょ?」
アキラの乾いた笑い。
ハッとした。
手に汗が滲んで、ズボンの膝辺りをギュッと握る。やけに自分の瞬きがゆっくりと感じた。
「…酷くないよ。」
「え?」
思った。
どうしてアキラは、こんな時でも気持ちを抑え込むのか。無意識なのかもしれない。僕の勘違いなのかもしれない。
でも、そうゆう風に見えたんだよ、アキラ。
キミの瞳の奥に隠された全てを、僕はまだ何も知らないけど。
僕を助けてくれたキミに、何か返せるかな。
何も知らずに、アキラの苦労も、過去も、全部全部分からないけど、酷くないよって薄い言葉を投げかける。
そんなことしか絞りだせないんだ。


