「え〜っと、まず。川畑那月くん、11歳だね。」
「はい。」
「私は四宮明。20歳。この家の責任者です。」
そう言って僕の目の前に座る彼女は、いくつかの紙とペンを整理しながら袖を肩まで捲り上げた。
その姿を見ながらボケッとこれからのことを何となく考える。
今、僕が知っていること。明確なもの。
まず始めにこの家のことだ。
ーーーこの家は、身寄りがないだとか、家庭環境に問題があるだとか、何らかの理由で帰る場所のなくなってしまった未成年のための家だという。
そんなこの家で、今日からお世話になる僕、
川畑 那月(かわばた なつき)。11歳。
僕の場合は家自体があっても帰る場所がないというケース。
うん、ちょっと、両親と仲良くなくて。
そんな理由で家を飛び出し、帰りたくなくて家をあけるようになった。
ひたすら外を歩き回って、誰かに声をかけられたら走って逃げて。
何がしたかったのか自分でもよくわからなかったけど、一つだけハッキリしてたのは、家に居たくない、それだけだった。
そして1ヶ月前、家に帰らず夜の街を彷徨う僕に、いきなり声をかけてきたのが、今目の前に座っているこの家の主人。
四宮 明(しのみや あきら)。
そう名乗る主人は、男よりも格好い正真正銘の女の人だった。


