憂架「...とりあえず...行ってきて、ください......」


優「そうだね、あとでゆっくり訊きたいこともあるし」




彼はそういって私の身体をベッドに倒すと、玄関へと向かった


生理用品を頼ませるなんて...
きっと恥ずかしかっただろうな......

ごめんなさい...優さん


心の中で謝罪していると、玄関からしゃべり声が聞こえた


...宅配...?



ガチャンッッ



突如ガラスの割れる音が響き渡り、
私は直ぐ様ベッドから身体を起こして玄関へと向かった

優さんを見つけて声をかけようとすると、明らかに宅配ではない人が優さんに向かってナイフを振り回していた


「憂架ちゃん!?危ないから来ないで!」

私と目が合った優さんは狂暴な彼の攻撃を避けながらそう叫んだ




憂架「...優さん...?...その人......」


優「いいから早く戻って!俺もすぐ戻るから!」




優さんは彼が振り回しているナイフを素手で掴み、その手を血で濡らしていた

靴箱の上に載せてあった花瓶は粉々に砕け、
床には水と白百合が散らばっている


優さんの手から伝って落ちた血が水面に広がる
と同時に、彼の顔も苦痛に歪む


ジャージを着た“誰か”。

その誰かが誰...なんて、わかっているのに...



信じたく、ない



「__...」 口から漏れた言葉に、その人物が振り向いた




昴「よォ、憂架...今日は楽しかったな」


憂架「...ぁ...す 昴、くん......」


昴「あれからお前気失ってなー、俺がここまで連れてきたってんけど...」




昴くんはそこで一旦言葉を区切ると、優さんの掌を抉るが如くナイフを持つ手を捻った

噴水のように血が噴き出す


ダメ...早く...血、止めないと──・・・!


私が優さんに伸ばした手は、昴くんに掴まれた




昴「その彼氏サンは俺のこと信用してへんみたいやねんな」


憂架「...いッ!!昴くん...痛いよぉっ」

捕らわれた右手首に、鋭い痛みが走る


昴「憂架は痛いのんが嫌いなん?」




それまでは座り込み、掌を押さえてこちらを見ているだけだった優さんが起立し、昴くんの頬を目掛けて拳を飛ばした

そして彼が怯み、手の力を弱めた隙に私を抱き上げて二階へと連れていった


後ろから物凄い勢いで昴くんが追ってきたが、間一髪、部屋に入って鍵をかけた

扉の向こう側からは頻りに拳を打ち付ける音が聞こえる




優「憂架ちゃん、あの子と知り合い?」


憂架「え...と....クラスメイト...です」


優「へえ、そうなの?...彼はそう思ってないみたいだけどね」




優さんは意味深な笑みで呟くと、コンセントに挿さっている携帯の充電器を抜き、私に差し出した

電源を点けると、電池残量はMAXになっている


彼を見ると、二つのカーテンを取り外して繋ぎ合わせている

そして私に手袋を渡して窓際へと移動した。