優「...俺も行ったら...きっとこいつもついてくる......
憂架ちゃんにこいつを近付けたくないの、俺の気持ちもわかって」




優さんは私の手首を引いて窓際に寄せると、
いつもの掴みどころの無い笑顔でそう言って額にキスをした


彼はちゃんと私を愛してくれている

そう実感すると、涙が溢れ出す


...もう...これ以上迷惑かけられない...
.........行かなきゃ......。


覚悟を決めた私は指先で涙を払い落とすと、
くるりと身体を反転させて窓枠に足をかけた




昴「なにすんねん!オイ...ッ、どけや!」


優「憂架ちゃん、早く──」




振り返っちゃダメ...今は優さんの言う事を聞くんだ...


私は優さんの手首にできるだけ負担をかけないよう、手早く滑り降りた




「──うッ!」かなりの勢いで花壇に背中を打った


痛いけれども、今はとにかく優さんを信じて逃げないと...!

──────────


──────

「...はぁっ...はぁっ......」




何も身につけていない足の裏には血が滲んでいる


車や人、猫すらも通らない道路をひたすら走る


三月の風は寒いな...早く、家に戻れるといいけど─…


そんなことを考えながら左手にある路地へ入ると、誰かにぶつかった




「...す、すみません......」


「あれ?もしかして憂架ちゃん?(ハァト)」




知り合い?と思って顔を上げると...やはり知らない人だった


明るい茶色でさらさらの髪、一重だけど大きい瞳、高い鼻、厚い唇


同級生にこんな人はいなかった気がする

なんか、雰囲気が違うし...


......高等部の先輩?




「おれが誰かわかんないって顔してるね
 Shinjiの友達だよ」


「...Shinji先輩のお友達だったんですか?ご、ごめんなさい...」


「いいよいいよ、おれのことはマオ先輩って呼んでね(ハァト)」


「...はっ、はい...マオ先輩...」


マオ「うん、いいね」




先輩はにこっと笑うと、私の頭を撫でた

そして私の足を見て「家出?」と訊いた


中々煮え切らない様子でいると、先輩は私の手を繋いだ




マオ「家出でにしろそうじゃないにしろ、
女の子がこんな時間にひとりでうろついてたら攫われちゃうよ?
とりあえずおれの家おいで(ハァト)」


「...いい、んですか......?」


マオ「もちろん(ハァト)憂架ちゃんならいつでも大歓迎だよ」




私は安全な場所に行けると安堵して、つい緊張の糸を緩めてしまった


そして後に後悔する



どうして彼に、気を許してついて行ったのかと。