「──・・・憂架ちゃん」




優しい声で名前を呼ばれ、軽く身体を揺すられる。
心地好い揺れが、さらに眠気を煽る。


まだ眠い...もう少し寝かせて...まだ起こさないで...




「憂架ちゃん、早く起きな
俺今から仕事あるから家の説明しないと」


憂架「......ぇ...家...?」




私は瞼を開けて回りを見渡した。


──・・・私の部屋じゃない......


そして...男の人、もちろん全く知らない




「やっと起き「...誰ですか...?」えぇ!?...覚えてないの?」




ゆっくり頷くと、その男の人は煙草に火をつけながら話し出した。




昨日、この人が家に帰ろうとしたら突然私が現れて

「家の場所忘れたぁ〜、泊めてぇ〜ねーお願ぁ〜い」

とか言ってこの人にしがみついてきた...らしい




そんなこと...したっけ??
んー・・・わかんない、完全に記憶が飛んでる




「なんか酒、飲んでたみたいだったから昨日は俺が世話してあげたんだよ
風呂も入れてあげたし、服も着替えさせてあげたし寝る時も...」


憂架「...//もっ、いいです...なんか、ごめんなさい...」


「あはは(笑)いいよ別に、でも君多分まだ高校生でしょ?
酒抜けてないだろーから今日は学校休みな
......じゃ、俺は仕事行ってくるね^^」




彼は灰皿で煙草を押し潰すと、笑顔でそう言って私に背を向けた。

待って...まだ、お礼も言ってないのに...!


いつしか私は、玄関へ向かう彼を呼び止めていた。




憂架「...名前、教えて...ください」




私がそう言うと、彼はまた
「水野優、好きに呼んで」と言って微笑んだ。



......今思えば、あの時既に私は恋に落ちてたんだな