セレイアが無反応でいると、セレスは独り言のように続けた。

「この間の…貴女の戦う姿は、何よりも美しかった。
本当に見事な槍の腕前だ。いったいどこで習ったのやら。
ますます貴女が欲しくなった。
どうすれば、振り向いてくれる?
こんな気持ちははじめてだ」

「…………」

熱っぽく見つめられても、どんなに甘い声で訴えられても、セレイアの心は動かない。

セレイアは無反応を押し通した。

実際、セレスに惑わされずに、今は考え事をしていたかった。

セレスの槍を借りることはできないだろうか。護身のためにと言えば貸してくれるかも?いや、逃げるために使うと思われるに違いない。どうすれば…。

考え事をしていたために、セレイアは自らに迫る危機に気付くのが遅れた。

目の前が薄暗い、と思ったら、至近距離に迫ったセレスに両肩をぐっとつかまれ、背後の樹の幹に押し付けられていた。

「私を見てもくれないのか?」

切なげな視線に、セレイアはわずかに狼狽したが、それを押し隠して強気に発言した。

「見たわよ、今見てます、これでいい? いいなら、放して」