セレイアの予想通り、城の警備は厳重になった。

セレイアは部屋を移され、今度は窓のない部屋となった。監視の騎士の数も5人から10人に増えた。夜中でも、不寝番の侍女が寝室の外に控えている状態だ。完全に、逃げ出すことを警戒されてしまったらしい。

(これじゃ囚人だわ。何が聖なるラピストリ候補よ)

そう内心毒づいても、状況が変わるわけでもない。

正直、試練が終わるまでにここから逃げ出すことは、絶望的と思えた。

セレイアの気持ちは沈んでいた。

あとほんのちょっとで、ディセルのもとに帰れたのにと思うと、目に涙がにじんでくる。

“空中庭園”と呼ばれる、国の通称ともなった眼下に雲海を見渡す美しい庭で、セレイアはぼんやりとしていた。

「セレイア、頼むからそんな顔をしないでくれ」

隣ではセレスが、らしくもなく焦った様子でセレイアを励まそうとしてくる。

この男にだけは、何を言われても心動くわけがない。

ディセルのもとへ帰るのを、阻んだ男だ。