旅芸人の芸になんて、正直興味が持てなかった。

今街で噂の、とても美しい男性二人組だと聞いても、まったく関心がなかった。

芸などで、この心が癒えるわけがないのだ。

セレイアのこの憂鬱は退屈しているわけではなくて、帰りたいのに帰れないだけなのだから。

最終試練まで二週間余り。

セレイアは相変わらず監視付きの、不自由な生活を強いられていた。

図書館での調べものも、はかどらなかった。

ただ最終試練に合格してしまったらと、それが恐ろしくて憂鬱でならなかった。

けれど、希望はあった。

パレードの時、ディセルはセレイアに気づいてくれた。

だから彼が、なんとかしてセレイアを救い出してくれるのではと、そう思えた。

しかし何の音沙汰もなく日々が過ぎていくと、不安がこみあげてくるのも事実だ。

「シルフェは具合が悪いのですって。だからわたくしたちが二人で見ることになるのだけれど…って、聞いていらっしゃるの? セレイア」

はっと物思いから顔を上げると、目の前には頬を思いっきり膨らませたとびきりかわいい少女の顔があった。

「あ…ごめんなさい、王女殿下。ぼーっとしてました」

「わたくし相手にぼーっとするなんて、いい度胸ね! もう!」

ぷんぷん怒る姿もかわいらしくて、ほほえましい。