「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
雪と炎の大道芸だぜ~!!」

陽気な呼び込みの声につられて、客たちが広場に集まってくる。

ここ一週間で噂が噂を呼び、大人気となったこの芸には、すでにファンもおり、かなりの人数が押し合いへし合いしながら集まっていた。

その人の輪の中央に佇むのは、静かに人々の歓呼にこたえるディセルと、口上を述べるサラマスだ。

「まずは雪の芸をご覧あれ!
摩訶不思議、雲の上のこの国に、雪を降らしてごらんにいれましょう!」

ディセルが微笑み手を振り上げると、観客の女性たちから黄色い悲鳴が巻き起こった。

彼の美貌目当てに、何度も見に来る客も少なくない。

「雪よ、降れ!」

ディセルの声と共に、夏の空からふわふわと真っ白な雪が降ってくる。

「すごい! 本物の雪だ!」

「いったいどうやってやっているのかしら」

雪はしだいに密度を増し、ごうごうと唸りながら吹き狂う吹雪となった。

「冷たい! すごい!」

この国の人々は雪を知らない。

だからこそこの芸は、受けるのだろう。