(う……)

その事実を抉られるとセレイアは困ってしまう。

「は、はあ…まあ。偶然ですけど」

思い切り顔をひきつらせたセレイアに、女王はくすくすと笑った。

「そなたはまっすぐな娘だ。
そなたが王位を継いでも、わらわはよいと思うておる。
どんな事情があるにせよ、明日からの試練、本気で受けてほしい。それがわらわの願いだ。
―さて、わらわはそろそろ行かねば。ではな、セレイア、セレス」

女王は来た時と同じように、颯爽と、風のように去っていった。

女王の言葉がセレイアに重くのしかかる。

(試練、本気で受けるようにって、言われても……)

セレイアはなんとしても、試練に落ちなければならないのだ。

(女王様、ごめんなさい。
私、試練に本気でなんて、臨めません)

とにかくどんな手段を使ってでも、試練に落ちるようにしてみせる。

しかしそのことに罪悪感をおぼえるほどには、セレイアは茶目っ気たっぷりの気さくな女王や、旅人に親切で平和なこの国のことを、好きになりはじめてしまっていた。