さらわれてから一週間。

不本意にも逃げ出せずに過ごしたその間に、セレイアはいろいろなことを知った。

主にシルフェが、親切にいろいろ教えてくれた。

まず、今自分がどこにいるのか。

なんとサティエイト本島の、クイーンズパレスにいるのだという。

道理でどこもかしこも内装が豪奢なはずだ。

セレイアに与えられた部屋はパレスの一角、青銀騎士団団長の住む邸宅の中にある。

他の娘たちはパレスの別の場所に集められているというのに、なぜセレイアだけ団長の邸宅にいるのかというと…それはセレイアが団長のみつけた“お気に入り”だからだという。

迷惑千万な話だ。

もうお察しのことと思うが、団長とはレティシア王女の「伯父上」、セレイアをさらったあの男なのだった。

「名前はセレスシャル。現女王フィーヴル様の弟君。“空のセレス”で名が通っているくらい、見事な青プミールの乗り手よ。剣も槍も得意だと聞いたわ。
あの顔だし、女性にはモテモテだけど、仕事一途なカタブツだから、令嬢たちも攻略しあぐねているっていう噂よ。
それにしてもセレス様にさらわれてきたって、本当なの?」

「本当よ。いきなり気絶させられたわ。それで何がお気に入りよ、腹立つったら…」

セレイアはうんざりと肩をすくめる。