サティエイトへは天空をかける青プミールに乗って向かう。ゆえに大きすぎる獣を持つ旅人達は、サティエイト滞在期間中、この獣舎に家畜をあずけていくのだ。

大切な仲間であるプミラを人に預けることに、セレイアは最初強く抵抗をおぼえたが、係員たちの愛想のよい対応と、清潔に保たれた獣舎、リラックスした様子の預けられた家畜たちを見て、ようやく安心することができた。

ここになら、プミラを預けても大丈夫そうだ。

「だけど…なるべく早く帰ってくるからね」

セレイアがぎゅうぎゅうとプミラを抱きしめていると、サラマスが呆れたような声をあげた。

「おいお嬢ちゃん、もう時間だぜ。さっさと行くぞ」

サラマスは、炎のような真紅の髪に真紅の瞳の美丈夫だ。

炎のような、という形容は正確と言える。

なぜなら彼はまさしく、炎の化身、炎の神であるからだ。自在に炎を操り、マグマに落ちても死ぬことのない彼は、三か月前からセレイアの旅の仲間だった。

「サラマス、そう言わずに。
セレイア、いいんだよ、好きなだけ別れを惜しんで」

そう優しい声をかけてくれるのは、銀髪に銀の瞳の麗人、ディセル。

彼も神々の一人―雪の神である。

セレイアはひょんなことから、神々を二人も連れて旅をするようなことになってしまったのだ。

優しくされると逆にセレイアはしっかりしなければと思った。

プミラから体を離し、一歩後ろへさがる。

「いいえ、もう行くわ。じゃあまたね、プミラ」

そうして三人はプミラと別れ、青プミールの発着場へと向かった。