セレイアは大人しく部屋に戻ってもう休むふりをして、窓を開け放ってみた。

思いきり身を乗り出し、何か見えないかと周囲を探る。

(高い……!)

驚くほど高い位置に、この部屋はあるようだ。下に木の影ひとつ見えず、びゅうびゅうと風だけが吹いている。

(プミラがいてくれたら……ちょっとがんばってもらわなきゃだけど、きっとここから連れ出してくれるのに)

置いてきたプミラが急に恋しくなった。それに…

(ディセル)

突然姿を消して、さぞ心配しているだろう。

もしやこのまま二度と会えなくなる、なんてことはないだろうか。

弱気になる心を叱咤し、窓伝いにどこかへ行けないかと壁面に凹凸を探したが、無駄だった。

銀の壁はつるりとして輝きを放ち、足場になりそうなところなどない。

今のセレイアにできることは、残念ながら何もないようだ。

(とりあえず明日を待って…皆様とやらに会ってみるしかなさそうね…)

セレイアはため息をつくと、寝台に向かった。

この状況で眠れるわけがないとは思ったが、逃げ出すチャンスが来たときに備えて、少しでも体力を蓄えておきたかった。

(必ず帰るから…ディセル)

美しい銀色の面影に、セレイアは祈るように語りかけるのだった。