目覚めた時、セレイアの目にまず飛び込んできたのは、豪奢な銀の天蓋だった。

ふと疑問に思う。

宿のベッドに、こんな豪奢な天蓋など、あっただろうかと。

そして体を包む感触が、やけにやわらかく心地よいことに気づく。明らかに、宿の寝台ではない。

(宿じゃ、ない……? じゃあなんで私は寝て―――)

そこまで考えて、すべてを思い出した。

セレイアはがばりと勢いよく身を起こした。

体からすべりおちたふわりと軽い感触は、高級な羽毛のもの。夏涼しく冬あたたかいといわれるものだ。絹の表面に、精緻な草花の刺繍が施してあるのがわかる。

銀の紗幕越しの室内は、ランプに灯りが灯されてはいるが、薄暗かった。

ちょっと視線を走らせただけでも、手の込んだ飾り彫りがあちこちに施された、美しい調度品の数々がうかがえる。

王侯貴族並みに豪奢な室内だ。

セレイアはごくりと唾を飲みこんだ。

趣味が悪いわけではない。好きになれないわけでもない。むしろ、好みの部屋だ。ただ、―――

(ここ、どこ―――)

そう、それがまったく見当もつかないのである。