主は余計な会話を好まない。

少しでも長居をすれば機嫌を損ね、どんな目にあうかもわからなかった。

ヴェインは立ち上がると礼をして、すぐさま退室した。

(言われなくても、あいつは殺すさ。今にね)

だが、ただ殺すだけではつまらないと思ってしまうのも事実だ。

あいつを殺すことだけが、自分の楽しみなのだから。

(うん、いいことを思いついた)

ヴェインの片頬が笑みの形に歪む。

―さあ、狩りの時間だ。

「…面白いものが見られるぞ」

これを、主も気に入ってくれたらよいのだが。

ヴェインがふっとわずかに広間を振り返ると、暗黒鏡に映る自分の姿が見えた。

冷たいほどクリアーにすべてを映し出すはずの鏡。

しかしそこに映る姿は、なぜかひどく歪んで見えた。