高地順応島で過ごす一週間は、あっという間に過ぎて行った。

いよいよ明日は本島に移動できるという日の夜、この美しい町を離れるのが名残惜しくなったセレイアは、就寝前に一人散歩に出ることにした。

ディセルとサラマスには一応、ちょっと散歩にと報告しておく。

危ないからと反対されるかと思ったが、二人は頷いただけだった。

それもそのはず、一週間過ごしてみただけでも、この町の治安がよいことは三人共に身に染みてわかっていた。

ちょっと散歩するくらいなら、女性が一人で歩いていても問題ないと、皆思ったのだ。

宿から外に出ると、夏の夜風が全身を包んだ。

白やピンクの花を咲かせる街路樹から、花の香りが漂ってくる。

(確か、宿から少し行ったところに、とてもきれいな花畑があるって、言っていたっけ)

気のいい店主が教えてくれた情報だが、なんだかんだと忙しくて、まだ行けていなかった。明日になればもう行く時間はないだろう。

セレイアはすがすがしい夜風を吸いながら、花畑に足を向けた。