「ところでさあ、スノーティアスたちが天上界へ帰る方法を探しているって本当?」

さんざんサラマスとじゃれあった男の子のシルフェが、唐突にそう声を掛けてきた。

「僕、知っているけど」

「…!! 本当に?」

ディセルもセレイアも、驚きに目を見開く。

どんなに文献をあさってもみつけられなかったことを、シルフェは知っているらしい。

「うん。天上界に帰るには、天上界側から地上に向けて、ゲートが開かれる時と場所を待たなければならないの。僕は、もしサラマスをみつけられなかったら、いったん帰る気でいたから、詳しいよ。
次のゲートは五か月後、エイフォーティク帝国で開く」

「エイフォーティク……」

南の大帝国の名だ。

近隣諸国を次々と併呑していく、強大な国。距離こそ離れているが、トリステアも常に警戒している国だ。

そこに行けば、天上界への道が開く…。

サラマスが、焦ったように声をあげた。

「ちょっと待てよ。じゃあ、こいつも、俺たちの旅についてくるっていうのか!?」

「そうだよ♪
嬉しいね! サラマス♪」

「だーーーっ! ひっつくなーーー!!」

賑やかな二人に比べて、ディセルとセレイアは静かだった。

黙り込み、うつむく。

―あと五か月。

一緒にいられる時間は、あと五か月しかないのだ。

たったそれだけ…。

二人は同じ気持ちでいた。

けれどそれを、互いに打ち明けることなど、できなかった。