セレイアは駆け出しながら、シルフェを振り返った。

「シルフェ! お願い! 風でこの霧を流して!」

シルフェは一瞬なぜ知っているのかと驚いたような顔をしたが、すぐに頷いてくれた。

セレイアはセレスめがけてさらに走る。

霧が出たということは、近くにいるはずなのだ。彼が。

丸腰では危ない。

背後では、凛とした声で、シルフェが告げている。

「風よ! 私の風。この霧を流して!」

するとどこからか強い風が吹き付けてきた。ビュオオ、と音を立てて渦巻いていく。

…しかし。

「…うそ」

シルフェが愕然と呟く声が聞こえた。

セレイアも気が付く。

(霧が、流れていかない…!?)

黒い霧は重さを持ち合わせているようで、ほとんどが風に流されてくれなかった。一部流れた霧もあったが、すぐに新しい霧が沸き起こってくる。

「セレス! 槍を貸して!」

「セレイア!?」

貸してと頼む体裁とは裏腹に、セレイアはセレスの手から槍をぶんどった。

そして特別席へと向かう。