「とても責任の重い仕事ではあります。
けれど、女王にしか守れないものがある。国庫を開いて飢饉から民を救うことも、他国と交渉して国を豊かにすることも、女王にしかできないことです。
大勢の人の命を、幸せを、あずかる仕事なのです。
そしてその女王を決める試練は、その人の心を見極めるものです」

「…………」

「その人の心を見極める試練。
国を、民を、守るに足る者なのかどうか、それだけの心を持ち合わせているのかどうか。
それは、たとえほかにやりたいことがあったとしても、受けて見て損するようなものではないと、わたくしは思いますわ」

「…………………」

「それにわたくしは、正々堂々と、ライバルたちと共に試練を受けて、ラピストリに選ばれたいのです。それでなくては、本物の女王とはなれない、そんな気がするのです」

レティシアはなんて大人びているのだろうと、セレイアは自分が恥ずかしくなった。

望まない試練から、逃げ出すことばかり考えていた。

器を評価され、選ばれてここまで来たのに、その意味の重さをないがしろにしていた。

けれど、それでも。

ラピストリになるわけにはいかない―――。

「少し、考えさせてください、レティシア王女殿下」

「ええ、そうね。考えるといいわ」

それで、セレイアはレティシアの部屋から退室した。