麗雪神話~青銀の王国~

正直、踊れない曲の方が少ない。

ダンスは王太子の婚約者、そして姫巫女の仕事のひとつだ。徹底的に教え込まれて育っている。

セレイアは堂々と、セレスのリードに導かれて踊りだした。

ふわりと舞う真紅のドレスと、わざと結いこぼした長い金色の髪。

二人が踊りはじめると、場がざわついた。

それほどに二人は見事な踊り手だった。

セレイアも、セレスも、手足の指先までの所作が、流れるように美しい。

セレイアがくるりとまわると、周囲から感嘆のため息がもれた。

「美しい」

「あの令嬢は」

「ラピストリ候補の」

噂話は、セレイアの耳には届かなかった。

最近あまり動いていなかったからか、久々に踊る感覚が、セレイアに喜びを与えていた。だからセレスがご機嫌な表情でいたずらっぽく瞳をまたたかせたことに、気が付かなかった。

曲が終わる。

その時、ふっと耳元に息を吹きかけられた。

「……っ!! な、なに」

セレイアがはっとしてセレスを見ると、何やらにやにやしている。

いたずらされた、と思うと、かっと顔が熱くなった。

「ちょっとセレスっ!?」

いつもなら目を吊り上げて怒り出すところだが、セレスが屈託のない笑みを浮かべているので、気を削がれた。それに、踊って気分がだいぶすっきりした。これは、誘ってくれたセレスのおかげだろう。

「ありがとう、すっきりしたわ」

セレイアはちょっと微笑んで、お礼を言った。