きらめく白銀のスーツに、赤い裏地のマントを羽織ったその姿は、こんなに豪華絢爛な人々の中にあっても、ひときわ輝いている。

ディセルと一瞬目が合った。

彼は何かに驚いたようだ。

二人の間に、えもいわれぬ空気が流れる。

まるで時間と空間が、二人だけを切り取ってしまったかのように。

(何か言うのよセレイア。今日こそは、謝るのよ)

セレイアが勇気を出して口を開きかけた時、背後から響いた澄んだ声が、二人の空気を切り裂いた。

「スノーティアス! やっぱりあなたも来ていたのね!」

声だけで、誰だかわかった。

そして振り向いてしまったことをセレイアは後悔した。

華やかなエメラルドグリーンのドレスに身を包んで現れたシルフェが、ディセルと並び立つくらいに、それはもう美しかったからだ。

―婚約者。

その言葉が頭をめぐった。

セレイアは結局、ディセルに声をかけることができなかった。

そして、舞踏会は始まってしまった。