整列の時間になり、続々とクラスメイトが廊下に出始める。
神田が並びに行くのを見計らい、彼女が席を立ったのを見て私も立ち上がる。
そして、話しかけようと思ったが…
えっこういう時ってなんて話しかけるの!?
まだ自己紹介してないから名前もお互い知らないし!!
いつも成り行きでいくけど、いざ意識していこうとするとなんて話しかければいいのか分からない。
もういいや、とりあえずなんか話しかけちゃえ!
神田が教室の後ろのドアから出ようとしたところで、私は隣に行ってさりげなく話しかける。
「緊張するねー。」
神田は私に気づき、少しびっくりしてから
「そうだね!私さー、クラスに友達いないんだよね!みんな他クラスにいるし私超ハブられたんだけど!笑笑」
神田はハイテンションに返事をしてくる。
まだ友達いないし、不安だろうからとりあえず仲良くしておこうという魂胆だろう。
「そうだねー!実は私もいないんだよね!あっ、私鈴本ほのかっていうんだー」
「神田日和でーす。よろしくねー!自己紹介やだよねー!最初肝心だし、なんて言おうかな!?ってか、何小?」
「朝日小だよー。」
「朝日小ねー!あっあいつ知ってる!?直樹ってんだけどー」
「あ、『田中直樹』でしょ?」
田中とは同じ小学校で、中学校も一緒だ。
「あっ!そうそうそう!直樹って学校でどうだった?」
そう神田が食い気味に聞いてくる。
ってか、あんま話したことないし。
低学年の時は一緒に遊んだりしてたけど、高学年で田中は学校の中心人物になり女子から人気が出るようになった。
そのため、全く話さない。
「クラスの女子に人気だよ。かっこいいもんね。」
適当に感じたことを言ってみる。
「そっかぁ、直樹とうちいい感じなんだよねー。」
あっ、そうですか…。
聞いてねーよ、そんなこと。
神田なんて田中、相手にしてたっけ?まぁ、確かに一緒に遊んでたっぽいけど。田中は神田のことなんて全然意識してなかった。
田中はこはる一筋だもんねー。
こはるというのは、本名『桜田こはる』。めっちゃ美人で高嶺の花。でもそれを鼻にかけていないし、性格美人でもある。
小学校も同じで、女子からも男子からもモテモテだった。
でも…。

