【慎也side】

昔から、中性的な顔立ちのせいで、よく男子にからかわれていた。

『雪島って、実は女なんじゃねー?』

『ねえ雪ちゃん、オレと付き合って
よー!』

そんなことを毎日言われた。

『お前、肌白過ぎ。幽霊かっつの』

なぜか焼けない、白い肌を馬鹿にされ、

『その口、リップ塗ってんの?うちは
そーゆーの禁止って、知ってる?』

手入れも何もしてない、紅い唇を馬鹿
にされ、

『髪、黒っ!男子のくせに、何お前、
そんなに優等生だったっけ?』

染めてなどいない、真っ黒な髪までも
馬鹿にされた。

そして、中学3年のとき……。

『なーなー、雪島って実は女子なの?』

教室の隅で読書をしていたら、クラス
の問題児グループのリーダーに話しかけられた。

『あー確かに!無駄に肌白いし、小顔
だしな!これは怪しいな……!』

『なんか、女っぽいよな!』

馬鹿らしい解釈に、言葉も出なかった。

そして、次の瞬間、リーダーが決定的な一言を放った。

『よし!脱がしてみよーぜ!』

リーダーの言葉を合図に、男子たちは
ジリジリとこっちに寄ってきた。

『何ー?男子たち、何してんの?』

いつも感じの悪い、女子のグループまで
集まってくる。

『雪島がホントに男か、確かめんの』

『ふ〜ん……』

女子まで、ニヤニヤと笑い始めた。

嫌だ……やめろ……気持ち悪い……!

『いーじゃん!やってみてよ!』

女子の1人の言葉が、決定打になった。

男子たちが一斉に俺のズボンを脱がそうとしてくる。

『やめっ……!やめろよ!』

必死に抵抗するも、押さえつけられて
身動きができなかった。

『さ〜て、果たして雪ちゃんに男の“証”
はあるのかな?』

リーダーが近寄ってくる。

やめろ……来るな……!!

『……おっ?』

リーダーは、俺の顔をチラッと見て、
いかがわしい目つきで笑い始めた。

『やっべー!雪ちゃん、その顔やべー
っての!……今なら俺、雪ちゃんの
こと犯せるカモ』

そのとき俺は、どんな顔をしていたん
だろう。

そんなこと、考える暇などなかった。

俺は、少し動いた右足で、リーダーの足
を思いっきり蹴った。

『ってぇ……!!』

みんなが動揺している隙に、俺は教室を抜け出した。

そして、走った。

走って、走って、走って……気がつけば
家の前の道で倒れていた。

それ以来、俺があの中学校に戻ることは
卒業式であっても1度もなかった。