「フゥ……じゃあ今日も、茜といっしょ
に食べるとしますか」

雪島くんに跳ね除けられたあたしは、
お弁当を持って隣のクラスに向かった。

「茜〜!」

「げ、カナ」

「げ、って何よ!ねえ聞いて、また雪島
くんにお昼断られた!」

「そりゃ……そうだわ」

夏木 茜は、隣のクラスだけどよく話す
友達。

黒い綺麗な髪をポニーテールにしている
100%スポーツ女子。

肌は日に焼けて少し黒いので、残念ながら“白雪姫”じゃないんだ……残念。

「ちょっと。勝手に人のこと残念って
思ってんじゃないでしょうね」

ヤバっ!茜は勘が鋭いんだ……!

「べべべ別に!思ってるわ〜けない
じゃんかっっ!」

「動揺し過ぎにも程があるわ」

ハァとため息をついた茜は、何だかんだ
言ってあたしの席を空けてくれた。

「あ〜り〜がとっ!」

「……………あのさ、カナ」

モヒモヒとおにぎりを食べるあたしに、
茜が言う。

「あんたさ、雪島のこと好きなの?」

____ゴックン

「え?あたしが好きなのは、白雪姫
だってば」

「じゃあなんで、雪島を追っかけてる
のよ」

「それは、雪島くんが白雪姫に似てる
から……あの美肌の秘訣をぉ……!」

「だから、イコール……ハァ、もう
いいわ」

お弁当を食べ始める茜。

何が言いたかったんだろう……?

「おっはへるはあいあ、あいあえうむ
わあいんあお」

「なんて?」

____ゴックン

「追いかけるからには、諦めるんじゃ
ないわよ」

まっすぐにあたしを見つめる茜。

何、当たり前のこと言ってんだろ。

「おーよ!……よし!ごちそうさま
でした!雪島くーん!」

その後、茜がボソッと呟いた言葉を
あたしはもちろん聞いていなかった。

「……ホント、恐ろしい子」